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立ち退き交渉 前編

どんなにいい物件でも、未来永劫建っているわけではありません。家主さんからすると、自分の代で取り壊すのか、次世代が取り壊すのか、それとも売るのか、建物の出口は3つしかありません。その中で取り壊して建て直す、これについてお話します。

 

貸している家主さんからすると「使わせてやっている」「便宜図っている」そう思っているかもしれません。入居者とのコミュニケーションが取れていたら、すぐに文句言わず退去してもらえるだろうと思いがちです。しかし立ち退き交渉に関しては、考え方をガラッと変えなくてはいけません。

 

まず立ち退き交渉は、「うまくいかない!」と認識しておいてください。だからこそ工夫が必要なのです。まずいちばんやりづらいのは、①相続を受けた人が立ち退き交渉をする、②収益物件を購入して立ち退き交渉する、です。これは①②とも、もともとの家主さんではないからです。相手方からすると何か文句を言いたいのですが、その際に「前の家主さんだったら言わなかった」とか「相続で物件もらったとたんに出て行けってどういうこと?」と言いやすいのです。もともとの関係性があると遠慮してしまいますが、物件を譲り受けた人なので賃借人側からするといちばん文句が言える存在です。そのため①②のタイミングで交渉するのは、できれば避けるようにしましょう。

 

うまくいかない話なので、まずは戦略を立てなければなりません。そのためには戦う相手を知らなければ策も練られません。どれだけ賃借人の情報があるかどうかです。まず大前提として滞納している人は、滞納を理由に先に出しましょう。そしてちゃんと家賃を払ってくれているいい入居者だけが残ってから、対応始めましょう。

 

入居者が生活保護等を受給している場合には、福祉課の担当者の方と連携して交渉していきます。公立の学校に通っているお子さんがいらっしゃるファミリーは、夏休みに引っ越ししてもらえるようなタイミングで交渉するのが得策です。連帯保証人やお身内の協力が得られる場合には、こちらもうまく連携をとっていきましょう。

 

最初のアプローチは、必ず書面を持って行きます。そこにはいろいろ模索したが、建物をどうしても取り壊さざるを得なくなった理由を書きます。また話を通している仲介業者の連絡先と担当者名も明記しておきます。そこに連絡すれば、事情を説明しなくても転居先をご紹介いただけるように予め根回しも必要です。

 

これらを記載した書面を持って、実際に入居者のところに頭を下げにいきましょう。在宅の場合には口頭で説明して、書面も渡します。その時に「こちらでも物件探しご協力しますので、希望をお聞かせください」と転居先の条件等も聞きだしてみましょう。また不在時には、書面を投函しておきます。

 

どちらにしても怒り出したり、怒鳴りだしたりする入居者もいない訳ではありません。その場合でも絶対に怒鳴り返さないこと。「そうですよね」と入居者の思いを受け止めることが重要です。人はいつか怒鳴り疲れるので、そのタイミングまでこちらは我慢比べしましょう。ここで何か言ってしまうと、立ち退き交渉は絶対にうまくいきません。受け止めて、耐えて、そこからのスタートだと思ってください。

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